馬刺しはヘルシーな食材として知られていますが、「プリン体が多いのでは?」「痛風が悪化しそうで不安」という声をよく耳にします。
結論からいえば、馬刺しのプリン体量は肉類の中では決して多くなく、適量であれば痛風リスクを過度に心配する必要はありません。
ただし、部位によって含有量に大きな差があること、アルコールとの組み合わせには注意が必要なことも事実です。
本記事では、プリン体と痛風の基礎知識から、馬刺しの部位別プリン体量・他の肉との比較・安全な食べ方まで、数値を交えてわかりやすく解説します。
そもそも痛風・プリン体とは?まず基礎を整理しよう
「馬刺しを食べると痛風になるのでは?」と気になっている方は、まず痛風とプリン体の基礎を正しく理解しておくことが大切です。
仕組みを知ることで、「どれくらいなら安全か」「どんなことに注意すべきか」を自分で判断できるようになります。
痛風が起きるメカニズム(尿酸→結晶化→炎症)
痛風とは、血液中の尿酸濃度が高くなりすぎることで引き起こされる病気です。
尿酸は体温の低い関節部位で結晶化しやすく、その結晶が関節内に沈着すると免疫反応が起こり、激しい炎症と痛みを伴う「痛風発作」が発生します。
足の親指の付け根に痛みが出るケースが最も多く、「風が吹いただけで痛い」とも例えられるほど激しいのが特徴です。
発作は数日から1週間ほどで落ち着くことが多いですが、繰り返すうちに関節が変形したり、慢性的な痛みが残ったりすることもあります。
プリン体が尿酸に変わる仕組み
プリン体は、すべての細胞に含まれる核酸(DNAやRNA)の構成成分であり、エネルギー代謝にも関わる物質です。
食品を食べると消化の過程でプリン体が分解され、最終的に「尿酸」へと変換されます。
尿酸のほとんどは腎臓でろ過され、尿として体外に排出されますが、プリン体を過剰に摂取したり、腎機能が低下していたりすると排出が追いつかず、血中の尿酸値が上昇します。
なお、プリン体は食事だけでなく、体内でも日々合成されており、体内由来(内因性)が全体の約8割、食事由来(外因性)が約2割とされています。
食事制限だけで尿酸値が劇的に変わるわけではありませんが、外因性プリン体の管理も積み重ねとして無視できません。
痛風のリスク要因(遺伝・肥満・腎機能・食事・飲酒)
痛風になりやすいかどうかは、食事だけで決まるわけではありません。
主なリスク要因は以下のとおりです。
| リスク要因 | 内容 |
|---|---|
| 遺伝的素因 | 尿酸の産生量・排泄能力に個人差がある |
| 肥満 | 体重増加により尿酸産生が増え、排泄が低下する |
| 腎機能の低下 | 尿酸の排泄効率が落ちる |
| 高プリン体食の過剰摂取 | 尿酸の原料となるプリン体の摂取が増える |
| アルコール摂取 | エタノール自体が尿酸産生を促進し、排泄を阻害する |
| 果糖の過剰摂取 | 清涼飲料水などに含まれる果糖が尿酸産生を増やす |
| ストレス・過労 | 体内の代謝変動により尿酸値が上がりやすくなる |
| 激しい無酸素運動 | 短時間で大量のATPが分解され、尿酸が急増する |
これらの要因が重なるほど痛風発作のリスクは高まるため、食事だけを気にするのではなく、生活習慣全体を見直すことが重要です。
1日のプリン体摂取量の目安は400mg未満
日本痛風・核酸代謝学会の食事指導では、痛風・高尿酸血症の予防・管理のために1日のプリン体摂取量を400mg未満に抑えることが推奨されています。
これはあくまで「食事から摂るプリン体」の目安であり、体内で合成される内因性プリン体は含みません。
日々の食事でこの数値を意識することが、尿酸値コントロールの第一歩です。
馬刺しのプリン体含有量【部位別一覧表】
馬刺しにはいくつかの部位があり、プリン体の含有量は部位によって大きく異なります。
「馬刺し=プリン体が多い」と一括りにしてしまうのは正確ではなく、どの部位を選ぶかによってリスクは変わります。
赤身・タテガミ・霜降り・フタエゴ・レバーの含有量比較
馬刺しの主な部位のプリン体含有量(100gあたり)は以下のとおりです。
| 部位 | プリン体含有量(100gあたり) | 特徴 |
|---|---|---|
| タテガミ | 約20mg | 馬特有の白い脂身部位。プリン体は極めて少ない |
| フタエゴ | 約90mg | あばら周りの希少部位。程よい脂とコクが特徴 |
| 霜降り | 約100mg | 赤身と脂身が混在。旨味が強い |
| 赤身 | 約130mg | 最もポピュラーな部位。タンパク質が豊富 |
| レバー | 約312mg | 内臓系のため突出して高い。食べ過ぎに注意が必要 |
(参考:馬たらし調べ)
レバーは他の部位と比べると別格に高い数値ですが、赤身・霜降り・フタエゴについては、後述するように他の食肉と比較しても特別高いわけではありません。
プリン体が最も少ない部位・最も多い部位はどこか
最もプリン体が少ないのはタテガミで、100gあたりわずか約20mgです。
タテガミはほぼ脂肪組織で構成されており、プリン体は細胞の核酸に由来するため、細胞核をほとんど含まない脂肪組織はプリン体量が非常に少なくなります。
逆に最も多いのはレバーで、約312mgと突出しています。
肝臓は代謝が活発な臓器であり、細胞が密集しているため核酸(プリン体)の含有量が高くなります。
馬刺しを楽しむ際、プリン体を気にする方にはタテガミやフタエゴを選ぶのが賢明で、レバーは特に食べる量に注意が必要です。
他の食材と比べて馬刺しのプリン体は多い?少ない?
馬刺しのプリン体量が「多いのか少ないのか」を正しく判断するには、他の食材との相対比較が欠かせません。
数値を並べてみると、馬刺しの立ち位置がはっきりと見えてきます。
牛・豚・鶏肉との比較
日常的によく食べる食肉と比較してみましょう。
| 食材 | プリン体含有量(100gあたり) |
|---|---|
| 馬赤身 | 約130mg |
| 鶏むね肉 | 約153mg |
| 鶏もも肉 | 約141mg |
| 豚もも肉 | 約122mg |
| 牛もも肉 | 約110mg |
| 牛サーロイン | 約90mg |
(参考:日本痛風・核酸代謝学会および各種食品成分データ)
馬の赤身は鶏むね肉よりやや少なく、牛もも肉よりはやや多い程度です。
「馬肉は特別プリン体が少ない」というわけではありませんが、「特別多い」とも言えません。
一般的な食肉と同等の範囲内に収まっており、特別に警戒が必要な食材ではないことがわかります。
レバー・イワシ・エビなど高プリン体食品との比較
プリン体が多いとされる食品と並べてみると、赤身馬刺しがいかに穏やかな水準かがわかります。
| 食材 | プリン体含有量(100gあたり) | 分類 |
|---|---|---|
| あん肝(酒蒸し) | 約399mg | 超高プリン体食品 |
| 鶏レバー | 約312mg | 超高プリン体食品 |
| 馬レバー | 約312mg | 超高プリン体食品 |
| エビ(大正エビ) | 約273mg | 高プリン体食品 |
| 豚レバー | 約285mg | 超高プリン体食品 |
| イワシ | 約210mg | 高プリン体食品 |
| 牛レバー | 約220mg | 高プリン体食品 |
| 馬赤身 | 約130mg | 中程度 |
(参考:帝京大学薬学部 金子希代子教授提供データ)
あん肝や鶏レバーと比べると、馬赤身のプリン体量は半分以下です。
高プリン体食品の代表格と同列に語られるべき食材ではないことが、数字からも明確です。
豆腐・卵などの低プリン体食品との位置づけ
一方、プリン体をほとんど含まない食品と並べると、馬刺しにも一定量のプリン体が含まれることは事実です。
| 食材 | プリン体含有量(100gあたり) |
|---|---|
| 卵 | 0mg |
| 牛乳 | 0mg |
| 白米 | 約26mg |
| 豆腐(冷奴) | 約31mg |
| オクラ | 約36mg |
| ブロッコリー | 約70mg |
| 馬赤身 | 約130mg |
(参考:帝京大学薬学部 金子希代子教授提供データ)
卵や乳製品と比べれば当然ながらプリン体は多くなります。
ただし、これはすべての動物性たんぱく質に共通することであり、馬刺しを特別扱いする必要はありません。
「プリン体ゼロの食品だけで生活する」ことは現実的ではなく、全体の摂取量を400mg未満にコントロールすることが重要です。
馬刺しを食べると痛風になる?実際のリスクを数字で検証
知識として理解できたところで、次は「実際に馬刺しを食べると痛風リスクはどのくらいあるのか」を数字で検証していきます。
抽象的な「食べ過ぎは危険」という話ではなく、実際の食べる量に落とし込んで考えてみましょう。
1人前(50g)あたりの実際のプリン体摂取量を計算
馬刺しの一般的な1人前は約50gです。
部位別に1人前あたりのプリン体摂取量を計算すると以下のようになります。
| 部位 | 100gあたり | 1人前50gあたり |
|---|---|---|
| タテガミ | 約20mg | 約10mg |
| フタエゴ | 約90mg | 約45mg |
| 霜降り | 約100mg | 約50mg |
| 赤身 | 約130mg | 約65mg |
| レバー | 約312mg | 約156mg |
1日の推奨摂取量が400mg未満であることを考えると、赤身1人前(50g)のプリン体量は約65mgです。
これは1日の上限の約16%にすぎません。
残りの食事で他にプリン体を含む食品(肉・魚など)を食べることを加味しても、赤身を1人前程度食べることで推奨上限を超えるケースは少ないと言えます。
唯一注意が必要なのはレバーで、1人前でも約156mgと、1日の上限の約39%を占めます。
他のメニューとの組み合わせによっては400mgに近づく可能性があるため、食べる量には気をつける必要があります。
毎日食べ続けた場合のシミュレーション
「毎日馬刺しを食べる」というケースを想定してシミュレーションしてみます。
赤身を毎日1人前(50g)食べた場合、それだけで摂るプリン体は1日約65mgです。
1食の食事に他の食材が加わることを考えると、1日の食事全体で現実的に摂るプリン体は200〜350mg程度におさまることが多く、400mgを大きく超えることにはなりにくいと考えられます。
ただし「毎日レバーを1人前食べる」場合は、他の食事内容によっては推奨上限の400mgを超える可能性があります。
また、日本酒やビールを毎日飲みながら馬刺しを食べるような習慣がある場合は、プリン体の摂取量だけでなく、アルコールによる尿酸値上昇の影響も加わるため注意が必要です。
すでに高尿酸血症・痛風がある人は食べていいのか
血中の尿酸値が7.0mg/dLを超えると「高尿酸血症」と診断されます。
すでに高尿酸血症や痛風の診断を受けている方は、食事からのプリン体摂取だけでなく、体内での尿酸産生・排泄バランス自体が乱れているケースが多いため、より慎重な管理が必要です。
こうした方にとっての馬刺しとの向き合い方は以下のようになります。
| 対象 | 目安 |
|---|---|
| 健康な方(予防目的) | 赤身1〜2人前程度は過剰な心配は不要 |
| 高尿酸血症の方(症状なし) | レバーは控える。赤身は1人前程度にとどめる |
| 痛風発作の経験がある方 | 主治医の指示に従いながら適量を守る |
| 痛風発作中の方 | 発作が落ち着くまで高プリン体食は避けることが望ましい |
特に通院・服薬中の方は、食事療法の内容を主治医や管理栄養士に相談することをおすすめします。
馬刺し自体が禁止食品というわけではありませんが、全体の食事バランスとアルコール習慣の見直しを合わせて行うことが大切です。
馬刺しを安全に楽しむための食べ方・注意点
馬刺しのプリン体量が特別高くないことがわかった一方で、食べ方次第でリスクが高まることも事実です。
安心して楽しむために、具体的な注意点を整理しておきましょう。
食べ過ぎないための適量の目安
馬刺しを楽しむうえでの現実的な適量の目安は以下のとおりです。
| 部位 | 推奨する1回あたりの目安量 | プリン体摂取量(目安) |
|---|---|---|
| タテガミ | 50〜100g | 10〜20mg |
| フタエゴ | 50g | 45mg |
| 霜降り | 50g | 50mg |
| 赤身 | 50〜100g | 65〜130mg |
| レバー | 30g以内 | 〜94mg |
赤身であれば100gを食べても130mgで、1日の推奨上限400mgの33%程度です。
他の食事の内容にもよりますが、赤身であれば「適量を守ればほぼ問題ない」といえる水準です。
レバーは少量でも数値が上がりやすいため、他に内臓系・魚介系のメニューがある日は特に量を控えることをおすすめします。
【要注意】馬刺し×アルコールの組み合わせが危ない理由
馬刺しとお酒は相性抜群の組み合わせですが、痛風リスクの観点からは最も注意が必要な組み合わせでもあります。
アルコール(エタノール)には以下の2つの働きがあります。
- 体内でのプリン体(ATP)の分解を促進し、尿酸の産生量を増やす
- 尿酸の腎臓からの排泄を抑制し、血中に尿酸が溜まりやすくする
つまり、食事でプリン体を摂りながらアルコールを飲むと、「尿酸が増える×排泄が減る」という二重の影響で尿酸値が跳ね上がりやすくなります。
馬刺しだけを食べている分には大きな問題はなくても、日本酒・ビール・焼酎などを合わせて多量に飲む習慣がある場合は、プリン体量よりもアルコールのほうが尿酸値へのインパクトが大きくなることもあります。
アルコールを飲む際は、日本酒なら1合、ビールなら500ml、ウイスキーなら60ml程度を目安に適量を守ることが重要です。
プリン体カットビールでも安心できない理由
「プリン体カットのビールなら大丈夫」と思っている方も多いですが、これは誤解です。
プリン体カットビールは確かにプリン体の含有量を減らしていますが、アルコール(エタノール)自体が持つ「尿酸産生の増加」と「尿酸排泄の抑制」という作用は、プリン体の有無に関係なく起こります。
結果として、プリン体カットビールを大量に飲んでも尿酸値は上昇しやすくなります。
「プリン体が少ないから多く飲んでいい」という判断は危険であり、飲む量そのものを適量に抑えることが根本的な対策です。
水を2L以上飲んで尿酸排泄を促す
尿酸は尿として体外に排出されるため、水分をしっかり摂って尿量を増やすことが尿酸値のコントロールに直結します。
1日の目標は水やお茶を合わせて2リットル以上です。
ただし、果糖を多く含む清涼飲料水やスポーツドリンクを大量に飲むことは逆効果になる場合があります。
果糖は体内でプリン体の産生を促進し、尿酸値を上げることがわかっているため、飲み物はできるだけ水・お茶・無糖のものを選ぶようにしましょう。
適度な有酸素運動・ストレス解消も重要
尿酸値は食事や飲酒だけでなく、運動やストレスの影響も受けます。
ウォーキング・ジョギング・サイクリングなどの有酸素運動は、肥満の改善や尿酸排泄の促進につながるためおすすめです。
一方、短距離走や激しい筋力トレーニングなどの無酸素運動(高強度の運動)は、筋肉内でATPが急激に消費・分解されることで尿酸が急増する場合があるため、痛風リスクが高い方は注意が必要です。
ストレスも尿酸値を上昇させる要因のひとつとされており、趣味や休養を通じてストレスをためない生活習慣を意識することも、地道ですが効果的な予防策です。
よくある質問(FAQ)
馬刺しを毎日食べても痛風になりませんか?
赤身を1人前(約50g)程度であれば、プリン体の摂取量は約65mgと1日の推奨上限400mgの16%程度です。
他の食事内容が極端に高プリン体でなく、アルコールの過剰摂取がなければ、毎日食べることで直ちに痛風になるリスクは高くないと考えられます。
ただし、レバーを毎日食べる場合や、ビール・日本酒と合わせて大量に飲む習慣がある場合は、食事全体での摂取量を改めて確認することをおすすめします。
タテガミはプリン体が少ないって本当ですか?
はい、本当です。
タテガミは馬特有の部位で、ほぼ脂肪組織で構成されています。
プリン体は細胞の核酸(DNAやRNA)に由来するため、細胞核をほとんど含まない脂肪組織はプリン体量が非常に少なくなります。
100gあたり約20mgと、馬刺しの部位のなかで最もプリン体が少なく、1人前(50g)あたりではわずか約10mgです。
プリン体が気になる方は、タテガミを積極的に選ぶのが賢い選択といえます。
馬刺しとビールを一緒に飲むのは避けた方がよいですか?
「避けた方がよい」とまでは言えませんが、飲む量には注意が必要です。
アルコールには尿酸産生を増加させ、尿酸排泄を抑制する作用があります。
少量(ビール500ml程度まで)であれば、馬刺しと合わせて楽しむことは過度に心配する必要はありません。
ただし、大量飲酒・連日の飲酒が重なると、食事のプリン体量よりもアルコールの影響のほうが尿酸値に大きく響く場合があります。
適量を守ること、水をしっかり飲むことを意識しながら、馬刺しとお酒の組み合わせを楽しみましょう。
痛風発作中でも馬刺しは食べられますか?
痛風発作中は、できるだけプリン体の多い食品を控えることが望ましい状態です。
発作中に高プリン体食品を食べても発作そのものをすぐ悪化させるわけではないという見解もありますが、発作が落ち着くまでの間は食事内容を整えることが回復の助けになります。
発作中または発作後は主治医の指示に従い、食事内容についても相談することをおすすめします。
完全に回復した後も、再発予防のために日頃の食事習慣・アルコール習慣を見直すことが最も重要です。

